食品科学科
食品製造系

農畜産物などの食品原料の生物学的?理化学的特性を解明し、それらを活かした加工技術を開発します。また、食品製造の基礎理論を研究し、微生物や酵素を利用した製造技術や新たな加工技術を探求します。さらに、食品製造装置の作動原理や操作技術を研究し、生産性と品質の向上を目指します。加えて、安全性評価や品質管理の手法を確立し、保存?流通過程での品質維持や有害物質のリスク低減を追求することで、安全?安心な食品の供給に貢献します。
食品製造開発学分野
食品の製造過程で使用する機械や食品の物性測定機器の作動原理について工学的および物理化学的に理解し、その特性や運転技術を修得するとともに、食品に用いられる新技術?新機械の研究開発を行います。
食品製造工学分野
食品の製造過程で使用する機械や食品の物性測定機器の作動原理について工学的および物理化学的に理解し、その特性や運転技術を修得するとともに、食品に用いられる新技術?新機械の研究開発を行います。
食品管理学分野
食品の安全性の評価手法、有害物質の作用メカニズムとその防除法の修得を行うとともに、食品の保存?流通過程での生化学的?微生物相変化と品質変化?安全性との関係を解析し、その評価法について研究を行います。
食品微生物学分野
食品の製造に利用されている微生物についての知識と取り扱い技術、発酵食品の製造技術を修得し、食品製造のための新しい微生物や酵素の開発と利用などについて研究を行います。
研究クローズアップ
微生物の「ミクロコミュニケーション」から発酵食品の本当の姿を解き明かす(食品製造系 食品微生物学分野)

小柳 喬 准教授
私達の食生活では、醤油、味噌、納豆やヨーグルトなど、たくさんの発酵食品が活躍しています。今、発酵食品の健康への好影響などがクローズアップされる例が多々ありますが、そもそも発酵食品とは何でしょう?それは、何千万個、何千億個といった微生物が食材の中で繁殖し、互いに生育を促進しあったり逆に排除しあったりしながら、「ミクロコミュニケーション」を繰り広げる場なのです。石川県の発酵食品「かぶらずし」や「なれずし」を伝統の製法でつくると、自然に乳酸菌が宿って、心地よい酸味と深い風味が出てきます。これは乳酸菌だけが偉いわけではなくて、何気なく存在する多くの種類の微生物たちが複雑なコミュニケーションをすることによって、最終的に乳酸菌の優勢化が促進されるのです。発酵食品の菌叢(きんそう:微生物の存在バランスのこと)を解析すると、そんな微生物たちの社会とドラマが見えてきます。
約60兆個もの細胞が集まってできている私たちの体と違って、発酵食品の微生物たちは単細胞で行動する場合が多いのですが、一つ一つの微生物がお互いの役割を発揮しつつ発酵?熟成を進めてくれる姿は、正に生命力そのものです。発酵食品を研究するということは、そこに生きる微生物の生命力を理解するということに他ならないのです。そのために、それぞれの微生物の持つ遺伝子やタンパク質の機能、代謝物なども含めて、幅広く彼らに興味を持って、研究を進めています。
発酵食品に限らずどんな食品も、有機物、つまり生き物から出来ています。食品から命をもらって生きている私達を見つめ直すことのできる食品研究の世界に、一人でも多くの若い学生さんが興味を持ってくれれば嬉しいです。
「攻め」と「守り」の食中毒:グローバルからグローカルへ(食品製造系 食品管理学分野)

中口 義次 准教授
日本に住む我々の食卓には、他国には類を見ない多様な料理と食材が並んでいます。また、四方を海で囲まれた日本では、“Sushi”や“Sashimi”に代表される魚介類の生食文化が発 展してきました。このような食習慣を支える日本の魚介類自給率は60%程度であり、残りは諸 外国、特にアジア地域からの輸入に依存しています。さらに、健康志向や和食ブームに後押し され、魚介類の消費量は世界的に増加しています。このようなグローバル社会においては世界 規模の視点に基づき、食品の安全性の確保に取り組む必要があります。
私は、理系の実験系の研究と文系の地域研究を経験し、それら両方のものの見方とアプローチで研究を進めてきました。これまで、東南アジアで各種の食中毒原因菌の病原性解析と疫学調査を実施しましたが、このような研究では対象となる病原体の特徴を知り、病原体と 食品との関係を明らかにするほか、病原体、食品と地域固有の食習慣にまたがる学際的な研究が必要です。そうすることで、これまで軽んじられてきたグローバル化の中での地域の固有性を理解した、「グローカル化の食の安全の理解」に繋げることができると考えています。